蛙藤のつれづれがき

蛙藤は「あとう」と読ませたい。本、ゲーム、アナログゲーム、勉強、適当に適度につれづれと。

「初心忘るべからず」[Habitica創作SS]

 

 

これは、「実生活での習慣を改善するゲーム」『Habitica』のハロウィン企画、創作SSです。

https://habitica.com/static/features

 (過去記事でHabiticaを紹介しています。ご存知ない方はHPかこちらをどうぞ)

kaeru-atou.hatenablog.jp

 

 

 

『私は蛙藤、あとうと読む。もうすぐレベルが100に届く戦士。今は転生を目標に、日々タスクという名のモンスターを倒している。

私の趣味は、戦士っぽくない服装をしてはすぐ衣装をチェンジすること。

魔法使いのようなローブと、見た目が派手な紫色の旗、そしてペットのカエルが特にお気に入りだ。

最初のボス・センタクロマンサーを倒してから、いくつものクエストを達成してきた。

ホコリウサギを見た時は、(なんて訳が秀逸なんだ!)と感動したものさ。
次の人生では、華麗な魔法でも楽しもうかと思っているよ、HAHAHA』

 

……とロールプレイングして、Habiticaを楽しむのが日課です。お恥ずかしい。

まあ、今夜はその遊びも終わりにしましょう。

いつものようにHabiticaにアクセス。かろうじて日課を全て倒し、遅々として進まないtodoのリストをやっと1つだけチェック。そして「23時には寝る!」という習慣を1つプラスにし、パソコンの電源を落としました。
一度リビングへ行こうと、扉を開けます。身の丈数メートルのカエルがいました。

 

あまりの驚きと怖さに全身を震わせた私を、カエルが見つめています。

彼(?)は汚い洗濯物を着込み、憤怒の形相らしく、目を見開いております。カエルが怒っている表情を、私は初めて目の当たりにしました。今まで見たことのある方がいらっしゃるのでしょうか否ない。カエルに睨まれた状態です。
屋内なのに松明を持っています。青い炎が天井近くまで揺らめいていました。
その炎に照らされながら、

 

「Treat me or I’ll trick you.」

 

すっごく流暢な英語で、カエルは話しかけてきました。完璧な英語です。

え? と私がおっかなびっくり首をかしげると、「あーこいつ分かっとらんな」という顔で、カエルはスタスタとキッチンへ。冷蔵庫をバカン!と思い切り開け、中からケーキを取り出しました。
明日はハロウィン。冷蔵庫にはかぼちゃのケーキを用意していたのです。
大きなかわいらしいお口で、ケーキをひとのみ。彼は満足そうに、私の方へ向き直りました。
すわ、次は私か。
と思ったのもつかの間、カエルは私に、きらめく玉を差し出しました。

 

それは「転生のオーブ」
Habiticaではレベルが100になると、「転生のオーブ」がもらえます。
それを使うと、「戦士である自分」から「他職種の自分」に生まれ変わるのです。

あれ。
しかしそれを使ったら、「戦士である自分」はどこへ葬られてしまうのだろうか。
そうだ、彼が着ていたのは。レベル若かりし頃に使い古した、最初の装備だった。
そうだったのか、彼の憤怒の面持ちは。冥土へ送られたことへの怒りだったのだ。

 

彼はこう言ったのです。
「Treat me or I’ll trick you.」
いわく、「私を敬わねば、お前をたたるぞ」と。

 

玉を受け取りテーブルに置いて、私は、とりあえずベッドに入りました。
なぜだろう、あんなに心臓が飛び跳ねていたのに、無性に眠くてたまらない。底なし沼に落ちるように、どろりと眠気が……。


朝。

なんだか不思議な夢を見たような気もするけれど、うーん覚えておりません。
私はまたHabiticaをチェックし、タスクを潰そうと七転八倒するロールプレイングを続けます。RPGといいますかこれ完全な妄想ですね、はい。

やった、ようやく、めでたく、レベル100!

『私はようやく成し遂げたのだ。転生のオーブが掌中で七色にきらめく。さっそく魔法使いに転生するぞ!いやあ、戦士は探し物が苦手だったからなー。クエスト大変だったのよな!今日は遊びまくってやるか、へへへ……」


ピンポン。チャイムが鳴りました。
宅配便?
モニターを見ても、誰も写っていません。
マイクからは、ペタペタ、という湿ったぬめりのある音。

そして、完璧な英語。

 

「Treat me or I’ll trick you.」